そうさおまえはスターゲイザー

スターゲイザーは星を見つめるもの、という意味で、天文学者、とか、占星術師、とか、夢想家、という意味がある。らしい。編集者は言い換えると、スターゲイザーなのかも。

その目にうつる世界

清水玲子「秘密」のネタバレがあります。)

 RADWINPSの曲に「死ぬ前にオマエが見てた世界見てみたいの」とかいう歌詞があって(タイトルも歌詞もうろ覚えで申し訳ない)うろ覚えなだけに聞き流してもいるのだが、他人から見て、自分も含めた世界がどんな風に見えているのだろう、とは思う。

 清水玲子の『秘密』は超簡単に説明すると、殺された人間の��脳�≠ェ見ていた映像を再現して殺人事件を解決していく話。

 そのシリーズのなかで、こんな話がある。

 盲目の少年が事故を装い殺されてしまうのだが、少年は盲目のため、事故当時の映像をもちろん「見て」いない。事件の捜査はそこで暗礁にのりあげるかに思えたが、少年が連れていた盲導犬もともに事故でなくなっていて、その犬の脳の見ていた映像を再現することで、ある事件が解決される。

 私は、『秘密』のなかでこの話しがいちばん好きなのだが、それは、この犬の見ていた映像、犬の見ていた世界の美しさ、というものの描かれ方が心に残っているから。

 『秘密』で、個人が見ている映像というのは、ありのまま再現されるのではなく、見ていた当時のその人の心のフィルターにより、より美しく見えたり怖ろしく見えたりしているさまが再現されるのだけど、そこでこの犬が見ていた世界、飼い主である少年を愛していた犬の心が見せる美しい世界、というのがとても印象的だった。

 同じしくみをもつ目で同じものを見ていても、見え方がかわる。違う世界がそこに広がる。
 心もとなく、けれどかえって心の深さを感じる。
 
 もちろんその誰かが見ている世界というのを実際に見ることはできないけれど、かなうものなら見てみたい、と思う。そしてその世界のなかで自分はどんな風に見えているんだろう?と思う。その映像はどんな言葉よりも雄弁に気持ちを語るだろう、と思う一方で、だからこそ、人は言葉で思いを伝えるのだろうな、と思う。そして、それを表現することに対して、不完全な言葉に対して、不完全さゆえに愛しさがわいてくる。私たちは、その不完全さを補いながら、日々生きている。