そうさおまえはスターゲイザー

スターゲイザーは星を見つめるもの、という意味で、天文学者、とか、占星術師、とか、夢想家、という意味がある。らしい。編集者は言い換えると、スターゲイザーなのかも。

笑顔の先

 会いたかった人、会いたくてたまらなかった人を遠くに見つけた。
 声をかけようかどうしようか迷って、一度その場を去った。
 けれども、今、会えなかったら、またしばらくは会えないな、と思って踵を返すと、すぐそこに彼がいた。

 あっ。
 私は驚いて声を飲み込む。

 そんな私を見て彼はいたずらっぽく笑った。
 きちんと顔をあわせるのは2週間ぶり、くらいだったろうか。
 その間に私は髪をばっさりと切った。

 「気付かなかったなあ」
 遠巻きに見て、存在には気付いていたけれど、かなり短く切っていたのですぐには私と気付かなかった、という。

 「ずいぶん伸びて、邪魔だったので、きっちゃいました」
 なぜかすこししどろもどろになってしまう。

 「そうなんですか」
 もったいないね、という顔をする。

 会いたい気持ちは会っても満たされることはない。不思議だ。
 もっと話したい。という気持ちにとってかわられる。
 次にどんなことを話そう、必死で言葉を探す。
 彼は、私が何か話そうとするのを、微笑みを浮かべながら待っててくれている。

 そうやってしばらく、他愛もない話をして、そのあとわかれる。

 2週間前。相談事があって、少しだけ、長いメールをした。
 いつになく長文で返事が来た。
 真摯な言葉に胸が詰まった。

 1週間前。ちょっとした頼みごとがあって、またメールをした。
 メールや電話ではややこしい話しなので会って詳細を話そうと、
 今、時間が大丈夫か、だけ聞いた。
 今日はもう帰宅した、との返事。
 なら、いいです。明日はどうか、と重ねて聞く。
 明日は出張でいない、と言う。
 忙しいですね。それではまた時間のあるときに、連絡します。
 と返した。

 どうしました?
 少しあわてた感じのメールが来た。
 ちょっと日本語がおかしい文面。

 たいしたことではないのだよ、と思いながら、
 返事の文面を考えていると、
 さらに重ねてメールが来た。

 携帯がこわれ気味で、文章がうまく打てない。
 ×日には戻ります。

 それを見て、無表情であせっている姿が浮かんで、おもわずわらってしまった。そして、
 ×日はあいにく私が都合がわるい。また日を改めて連絡します。と返した。

 いつでも大丈夫です!

 という返事がきた。

 そんなメールのやりとり後、初めて会った。
 笑えるかな。
 笑ってくれるかな。
 そんな不安があった。

 でも、振り返った瞬間。
 にっこりと笑ってくれた。
 
 悩む心をすこん、と蹴飛ばされた。
 
 笑顔がきれいな人が好きだなあ、と改めて思った。
 たとえ茨の道でも。その笑顔に導かれて、その道を私は進むだろう。