そうさおまえはスターゲイザー

スターゲイザーは星を見つめるもの、という意味で、天文学者、とか、占星術師、とか、夢想家、という意味がある。らしい。編集者は言い換えると、スターゲイザーなのかも。

しんぞうがギュッとなる

 書こうとする手が止まる。不幸には酔えるけど、勘違いがもたらす幸せはうまく言葉にできない。

 やべ、いま幸せだ、と思って何か言葉にしようとするけれど、言葉にしたらダメになる気がする。
 そして100%勘違いだった時の後々の自分の心情など慮ったりして、どこまでも自分がかわいいだけだ。

 でも、もたらされた幸せというか、幸福感はやっぱり嘘じゃない。

 飛行機が何時間も遅れてついた外国の地で、はっきりと日程は伝えていなかった(と思う)相手から空港に着いたばかりのタイミングで、「無事につきましたか?」なんてメールをもらった日にゃー顔が笑うでしょ。

 そして、だんだんと相手の口調がほどよくくだけてきていることとか。
 今まではバリバリ絵文字入りであっても、「です・ます」語尾の線は守ってきた人から急にくだけた口調のメールが来たら、こちらが守ってきたラインは容易に崩れるわけで……

 とか書いてるうちにいつも我にかえるんだな。
 ダメだ、落ち着こう、と言い聞かせようとする自分が現れる。

 けど、どこか突っ走りたくなる自分もいて、今回はちょっとやりすぎかなとも思えるお土産を買って帰った。やたらにかわいい絵柄のTシャツ。消えモノではなく身につけるモノだから、相手によっては引くかも、というレベルだし、周りからはばれるというか、過剰な好意の表れであるには違いない。

 そんなわけで渡すのにも躊躇した。夜、帰国を告げるメールに返事が来なかったことも、決意を後退させる出来事だった。お土産を持って家を出たものの、今日渡せるかどうか。今日渡せなかったら、タイミングを逸することになって、たぶん一生渡せないだろう、と思ってた。

 そしたら夕方になって返信が来た。笑顔の絵文字入りの「おかえりなさい」。
 決意が再び蘇る。思い切った。できるだけ平静を装い、会いに行く。

 「これ、お土産です」
 
 ペロンペロンのビニール袋に入ったそれを渡すと、彼は笑顔になった。「(透けて見える絵柄に反応して)かわいーっすね。(中身を取り出して)えっ?あーTシャツなんだ」表情は、喜んでる、ように見える。

 「サイズ大きいかもなんで、あの、家ででも寝巻きに」平静を装いながらも、説明する声がうわずってるように自分には思える。

 すると相手は笑顔で「着ますよ」と言ってくれた。

 ギューン。

 心臓がグッとつかまれた感じ。
 でも大の大人の男が、街中でそんなファンシーな柄のTシャツ着てたらちょっと面白すぎる。着てるところはぜひ見たいけど。

 密かに色違いでお揃いなのは秘密にしておいた。我ながら、、、ヤバイ人だね。