そうさおまえはスターゲイザー

スターゲイザーは星を見つめるもの、という意味で、天文学者、とか、占星術師、とか、夢想家、という意味がある。らしい。編集者は言い換えると、スターゲイザーなのかも。

六月一日の朝。それよりも少し前に。

 離れがたい気持ちがシンクロすることがある。
 というほど大げさなものではないけれど、仕事を終えて帰るところを後輩にご飯に誘われて夜の赤坂へ。なんとなく韓国料理、ということで適当に入ったお店でビビンパとかを食べる。見るともう終電の時間は過ぎていて、ついでだからマッサージでもしていくか、と後輩行きつけの店を覗くも、全員施術中なのか受付すらスタッフ不在。しょーがないねえ、じゃあカラオケでも行くか、と全然リラックスとは別方向の提案をしてみると意外にものってきて、せっかくだし誰かよぼーぜ、と仲良しのセンパイを呼び出す。

 家でくつろいでて一人でお酒飲んでたところのセンパイと渋谷で合流。前からカラオケ行きましょうね、といいつつ、一年近く行ってなかったので、ちょうどよかった。ロック好きなセンパイのリクエストにこたえ、エルレガーデンなどをチョイス。こないだ貸した吉井さんのCDについて全く感想を言われなかったのでこれはお気に召さなかったかな、と私にしては珍しくほとんど歌わないでおいた。  最初は2時間くらいで、といっていた時間も延長延長で気がつけば朝。もう帰りますよー、と乗ってきた先輩を連れ出す。空はすっかり明るく、渋谷の街は、まばらに車が走っている程度。この人のいない朝の渋谷ってけっこう好きだなーと思ってたら先輩が「じゃあ俺んちでコーヒー飲もう」とか言い出す。つーか帰るし、と思っていたし、どうせギャグでしょ、とも思ったが「いいっすよ、飲んでいきましょう」と乗ると「ほんとに来る?」。え、まじすか、という後輩の表情が見えたけれど、ここは乗りかかった船じゃ、というわけで、三人タクシーに乗り込む。きけば最近一人暮らしをはじめたという先輩。

 自分で誘っておきながら「超狭いけど、ひかないでね」とか「部屋でなんか見かけても、見なかったことにしてね」とか大学生男子のようなことをいうので「大丈夫っす」とてきとーに流す。

 新築のマンションで、思ったより広めのワンルーム。おされでポップな家具と、なぜか机代わりのダンボールのミスマッチにやや受け。そしてコーヒーではなくなぜかお水やトマトジュースなどをご馳走になりながら、だらだらと過ごす。途中、眠くなった後輩が、ベッドに寝転がりだす。仲がよいとはいえ、やりたい放題な私たちにも、酔っ払いのせいかやさしい先輩。「この布団、イケアでいちばん高いんだぜ」とか言いながら「ほらおまえも」となぜか私にも寝るように促す。つーか、今ふとん入ったら確実に寝ますがな、と思いながらも横になる。うーん、気持ちいー。最初は、楽しくおしゃべりしていたけれど、途中でどうにも耐えられなくなってダウン。薄れいく意識の中で、軽くかける程度にしていた布団を先輩が、すっぽり掛けなおしてくれるのを感じながらも、次第に……。しかし大音量で音楽をかけっぱなしだったのでしばらくして目が覚める。見ると、床に厚着をして寝転ろがっている家主が。す、すみません。。。。しかも枕がわりにスリッパ2足がさね。泣けた。

 いくらなんでも申し訳ない、と後輩と二人起き上がり、家主に撤退を告げる。しかし、ちょうどいい感じに眠りに入りかけている家主、起こしても起きず。帰りますよー。と告げると「なんだもう帰っちゃうの」「女はいつもそうだよ」とか寂しげなことを言う。しかし、居続けるわけにもいかないし、かといって戸締りをさせぬのも無用心だ。
 
 ゆさゆさ揺さぶり、さらには体を起こす手伝いまでして、ようやくなんとか意識を取り戻してもらう。

 またおいでね、今度は個別でね、とドンファンを気取る先輩が妙に可愛そうで可哀相になり軽くハグ。
「なんだよ半端なハグだなあ」というので、しかたねえなあー、ともう一度しっかりハグ。

 そして二人で手を振り振り、家を後にした。もうすっかりと日が昇りきり、通勤通学の人々について、駅まで歩いた。

 そして2時間ばかり眠り、また起きて出社。夜になり、どこか照れくさそうなメールが先輩から来た。後半はほとんど覚えてないんだろうな〜。ま、こっちも覚えてないだろうと思ってハグってみたんだけど。
 一人暮らしのはじめごろって、人が来ると妙に嬉しくて、そして人が帰るのが妙に寂しかったりする。そんな気持ちを思い出してみた、とある五月晴れの朝でした。