そうさおまえはスターゲイザー

スターゲイザーは星を見つめるもの、という意味で、天文学者、とか、占星術師、とか、夢想家、という意味がある。らしい。編集者は言い換えると、スターゲイザーなのかも。

キタ―――( ゜∀゜)―――!

 泊まり明けだし、まってるもの来ないし、仕事終らんし。お腹すいたし。ぐったり仕事してたら、人事の局長が、横に立ってた。昭和の任侠のような外見の局長は、うちの会社の百戦錬磨の人たちにもびびられる存在である。

 局長がおもむろに「ちょっといいか」と声をかけてきた。

 なんでしょ? 精一杯笑顔で応じる。と「ちょっと」ここじゃなんだから、という感じで移動を促す。

 この時点で心拍数あがります。

 黙ってついてこいな、その背中をまともに見るのも恐くて、うつむきながらあとに従う。

 なんでか上のフロアに階段で上がる。ひとつ上のフロアには会議室がいくつもある。
 っていうか、なんかしゃべってください。移動中一言もなしなんて恐すぎる。

 空いている会議室を見つけ、部屋に入る。入り口にいちばん近い席に座る局長。座れとも言われないので勝手に座る。局長はニヒルな笑顔を浮かべて、話を切り出した。

 「この部署の人間が誰もアンケート出さないからどんなもんかと思ってな」

 おお。そういうことか。うちの社では一年に一度、秋に人事アンケートが配られる。現状の仕事への不満とか要望とか、異動の希望とか、そういうことを書くやつ。希望者には人事部の人との面接もある。直談判もあり、ってことだ。

 たしかにうちの部署は誰も出してなくて、そういえば局長はうちの部署のボスのところにわざわざ言いに来てたなあ。そのときも居合わせてあわてたボスに「君は出さないの」とかいきなりふられて「だって忙しくてそれどころじゃ」とか答えた気がする。
 
 ともかくもまー、今の部署にとりたてて不満はない。へらへらと笑って「いやあ、なんか忙しくってあいまになっちゃってましたー、気がついたら締め切りも過ぎてたし」と答える。

 と、局長はニヒルな笑顔を浮かべたまま、

「おまえの不得意なことはなんだ?」

 と訊いてきた。

 えっ?
 何ですかその異動前提みたいな質問。

 いったん下がったはずの心拍数がリバウンドで上がりまくる。っていうか不得意なことしかありません。ふつー、こういうのって得意なこと訊くもんじゃない? ふつう、っていうか、この強制面接みたいなシチュエーションがまずありえないありえない。あまりの圧迫感に「すみません、


私がやりました 刑事さん

 って自白しそう。でも何もやってないので「うーーーーん…、弱輩者なので、不得意なことだらけというか…いまの部署も異動してきたときはどちらかというと不得意なほうで…。あのーわたし、もともと今の部署とは正反対のことやってるサークルにもいまして…」とよせばいいのに自ら地雷をまいて踏んでしまう。

 いまの部署不得意→ほかに不得意なものとりたててなし→異動ケテーイ(゜∀゜)

 みたいな図式がニヒルな局長のロマンスグレーというにはあまりにハードな角刈りに包まれた頭の中にできてたらどないしよう……。あせる私。

 局長「そうか。じゃあ、●●はどうだ?」とある部署の名前を挙げる。それってサークルの活動内容に近いんですけど! なにその具体的な提案。

 「あ、けっこう興味ありますね。●●のXさんに会いにいってお話聞いたことあります」って何答えてんの私ーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!その部署仕事やりがいはあるけど、超ハードで、部員の50%が倒れてるんですけど!!!!

 「なるほどな」うなづく局長。この展開はなんかまずい気がします。

 「あっ、でも、今の部署っていろいろやりたいことできるようになってきたと思うんですよね!!」とフォロー。あせってことばがうまく出てこない。するとさらに局長は。

 「前の部署にいたときはどうだった」

 工工エエエエエ(´Д`)エエエエエ工工

 戻るんですか? 戻っちゃうんですか?!

 「いたときはやっぱり辛くてぶっちゃけ毎日やめたいと思ってました」

 あーあーあー、ぶっちゃけちゃった。前の部署も好きだったけど、一年でおん出されて今さら戻されて一からはじめなおすのは辛すぎる気がするし。

 「わかった。」

 分かっちゃったんですカーーーーーーーーーーーーーーーーーー??クルマ

 「それは学生時代が楽すぎたからだな」

 なにその結論ーーーーーーーー?!
(脳内で絶叫)


 というわけで、なんか異動色濃厚になってきました。どーするオレどーしちゃうのオレ!?ってオダギリジョーみたいな選択肢はオイラにはないわけだが…。