そうさおまえはスターゲイザー

スターゲイザーは星を見つめるもの、という意味で、天文学者、とか、占星術師、とか、夢想家、という意味がある。らしい。編集者は言い換えると、スターゲイザーなのかも。

うす曇りの空からさす光

 朝帰り(仕事)。コンビニでバカみたいにいろいろ買ってもぞもぞ食べる。例によって部屋がきたないので、掃除しなきゃ、とか思いつつも、皿洗いと洗濯だけやって就寝。

 安い遮光カーテンでは朝日を完全には遮断できない。明るい中で無理に眠ったせいか、久々に夢を見た。

 どこかの街で私は信号待ちをしている。なぜかパチンコ屋の前。そこで、店に入ろうとする先輩を偶然見つけた。なぜか瞬時に「つけたと思われたらいやだなあ」と思う。それを察したかのように突然先輩が振り返った。が、会話もなく、突然に「バイバイ」と言われた。しかもとってもめんどくさそうに。いかにもその人が言いそうな口調で。
 これは夢だとわかっていた。でも、さよならなんだと思った。そこで目が覚めた。目覚めたわたしは妙にハイテンションで、少しだけカーテンを開け、窓を開けて「この光、この空気、好きっ」と妙にはしゃぐ。夏の夕暮れ時のような、秋の朝のような、やさしい光がさしこんでいる。台所にむかうと、洗ったはずの皿が、シンクに山積みで、透明のティーポットの中に、薄黄色の多弁の花がなぜだか入ってた。
「おいおーい。さっき洗ったよ」とつぶやいたところでまた目が覚めた。  夢を見ているときは、いつも夢だとわかっている。どうしてこんな夢を見たのだろう、ということもなんとなくわかる。だから夢から醒めればいつもそれは現実だった。夢から醒めた夢のなかで、なぜわたしははしゃいでいたのだろう。さよならが夢だったからか。そのひととは「さよなら」だとわかっていて、そんな夢を見た自分にか。もうずっとなんの重みも無い「さよなら」という挨拶さえ交わしていないほど、会話のない人と、もっと重い「さよなら」なんだと決めているのか。

 昔、好きだった人とどきどきしながら一緒に電車に乗って帰る夢を見たとき、突然その人が「おれ、○○君と帰るから」と雑踏に消えた。ゲイかいなーとしょんぼりつっこみながら目を覚ました。ゲイじゃなかったけど。結局、その人とはほんとうに「さよなら」をしてしまった。いまではなにをしているかもよく知らない。さよなら、と言われる夢は二度目で、その雑踏に消えたひとのことはほんとうに好きだった。めんどくさそうに「バイバイ」と言ったひとのことはどうだろう。そういえば、この人がわたしに向けて「サヨナラ」と言ったのは、私たちは喧嘩をしていて、捨て台詞のあとに小さく「サヨナラ」と言って去っていたのが最後だった。妙に律儀な挨拶にちょっと笑った。「サヨナラ」かよ、「バカヤロー、サヨナラ」かよ。実際にはそれは金輪際のおわかれではなかったけれど。そのあとは会っても気まずい気まずい。わたしは人と喧嘩をするのがほんとうに下手だ、としみじみ思った。

 バイバイと、軽い台詞でお別れするくらいがちょうどいいのかもしれない。さよならだけが人生だ。